【業界視点】中国人から見たアリババ「独身の日」、1日で流通総額3.4兆円を記録したその背景とは?
アリババ「独身の日」で過去5年間、驚異的な成長を遂げた上位5ジャンルは「医療健康」「インテリア」「化粧品&ケア用品」「書籍・音楽」「3Cデジタル製品」
劉青(Elva Liu)
transcosmos China ECBU Senior Department Manager
袁青宇(Yuki Yuan)
transcosmos China ECBU Shop Owner
<リード>
2018年のAlibaba(アリババ)「Tmall ダブル11」(独身の日)販促イベントでは、流通総額(GMV)は2135億元(日本円で3兆4160億円、1元16円換算)に達し、前年比26.93%増となりました。当日23時59分までの配送に至った受注件数は10億件超。合計18万のブランドが「ダブル11」に参加し、1日のGMVが1億元を超えたブランドは237に達しました。そのうち、国際ブランドの割合は40%を超えています。
「ダブル11」の開始以来、GMVが2000億元を超えたのは今回が初。特に、グローバルで経済状況が厳しいなか、中国の消費者がこれだけの購入記録を作ったのは、本当に驚くべきことです!
主要EC企業、1日で13億件を超える注文
これまでの「ダブル11」のGMVを振り返ってみると、成長率は一目瞭然です。
「独身の日」GMVの推移(『Ebrun』が公表したデータを基に編集部が図を作成)
「ダブル11」で記録したGMVの成長は、中国経済が発展しているトレンドを反映しており、中国における消費のアップグレードと大きな変化を表していると言えます。
「ダブル11」は2018年で10周年を迎えました。また、「Tmall Global」(天猫国際)が「ダブル11」に参加してからは5年目。「Tmall」の変化は、グローバリゼーションを促進していると言えるでしょう。
ちなみに、中国郵政局のモニタリングデータによると、11月11日に主要EC企業が受けた注文件数は、前年比25.12%増の13億5200万件。郵便、配送企業が取り扱った荷物の件数は前年比25.68%増の4億1600万件で、こちらも過去最高を更新しました。
全世界を驚かせた「ダブル11」、成長した理由
消費のアップグレード
AliHealth(アリババのヘルスケア部門)の消費医療事業部ゼネラルマネージャである鐘聰娣(Zhong Congdi)氏は、過去5年間で驚異的な成長を遂げた上位5ジャンルは、「医療・健康」「インテリア」「化粧品&ケア用品」「書籍・音楽」「3Cデジタル製品」であると説明します。
中国は“品質”を重視する新しい消費に入り、消費者は「健康用品」「インテリア」「文化的消費」など、質の高い生活へ密接に関連する分野に注目するようになってきました。
2018年「ダブル11」の期間中、「美容用品」「化粧品」「ヘルスケア」「保健用品」など、生活の質を向上させる商品は大ヒットしました。
消費のアップグレードは、主に以下に分類できます。
- 「構造」のアップグレード: “体験”をより重視するようになっています。「ホーム用品」「健康用品」など、生活の質に関連する商品が売れる割合が大幅に増加しています。
- 「理念」のアップグレード:消費者は自身の気持ちを重視するようになっています。合理的でパーソナライズされた消費を求めるため、個性的で、ハイエンドブランドの商品ニーズが高まっています。
- 「秩序」のアップグレード:ECプラットフォームも消費者の体験をより重視するようになています。そのため、消費体験を向上させるためのサービスの提供をスタートしています。
買い物体験を向上させるためのアリババの施策
「Tmall」は、消費者の購買体験を向上させるため、「ダブル11」の前にイベントルールを発表しました。
一定金額以上を購入した場合の値引き、店舗側が発行するクーポン、Tmall側が発行するクーポンなどが同時に利用できるように仕組みを変更。また、予約販売で決済を後払いをする際、他の商品とともにクーポンが利用できるようになりました。このような販促手段の最適化によって、消費者が便利に商品を購入できるようになり、購買体験の向上、EC全体の売上増加にもつながっています。
「ダブル11」がスタートしてからの10年間で、消費習慣や決済手段は大きく変化。アリババグループの決済会社Alipayのデータによると、11月11日における指紋や顔認識を活用した決済の割合は60.3%に達し、過去最高を更新しました。
オフラインとオンラインの融合、そして海外企業の中国進出が成長のカギに
10年も続く「ダブル11」の最大の特徴として、オンラインとオフラインの融合があげられます。アリババグループのCEOは、「2018年の『ダブル11』は、デジタル化が進んでいることを背景に、中国経済全体、ビジネス全体がインターネットと深く融合し、前例のないスピードで急速に発展しています」と述べました。
アリババグループ傘下のスーパーマーケット「盒馬鮮生」(Fresh Hema)、「大潤発」(RT-Mart)などのオフライン店舗も初めて「ダブル11」に参加。蘇寧雲店(SUNING Cloud Store)やスーパーマーケットの蘇鮮生(SU FRESH)、化粧品や生活用品類の紅孩子(Redbaby)、零售雲(Retail Cloud)、蘇寧小店(SUNING Store)など、家電量販大手である蘇寧(SUNING)傘下の6000以上の店舗も「ダブル11」に参加しました。
「盒馬鮮生」(Fresh Hema)
オンラインとオフラインの融合は、「ダブル11」と世界市場との「融合」にも影響を与えています。
国際社会とのつながりが増え、中国の消費者は全世界の高品質なブランドに注目し始めています。「Tmall」のデータによると、2018年の「ダブル11」期間中、消費者は75の国と地域で、3900カテゴリーの約1万9000にもわたる海外ブランド商品を購入しました。
「ダブル11」に参加した日本のブランドを例にあげると、美容機器ブランドヤーマンの「Tmall」旗艦店、「Tmall」国際旗艦店は、いずれも予約販売期間中に1億元以上のGMVを達成。カネボウ傘下のFreeplusの洗顔料は、3年連続でスキンケア商品の受注件数1位を維持しています。
ニールセンの最新調査によると、中国のオンライン消費者の81%が輸入商品に興味をもっており、中国ではベビー用品の売上高の約半数(48%)が輸入品となっています。2018年「ダブル11」の前日まで、「第1回中国国際輸入博覧会」(習近平中国国家主席も参加した、輸入特化の総合見本市)が上海で開かれ、海外製品を求める中国企業、中国市場を攻めたい海外企業のマッチングの場となりました。
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本記事は日本のECメディアIMPRESSで掲載されています。
日本語原文URL:https://netshop.impress.co.jp/node/6065