【業界視点】中国で巻き起こるコーヒーチェーンのO2O競争。スターバックスに迫る勢いの「Luckin Coffee」の戦略とは?
O2Oを自在に操る企業が活躍する中国。次は「OMO(Online Merges with Offline)」に進んで行くようです
姜赫 (Hayden Jiang)
transcosmos China
ECBU Business Planning Director
中国ECの主流は「C2C」から「B2C」へ、さらに「O2O」へと進化し、今度は「OMO(Online Merges with Offline)」と呼ばれる新たなビジネスモデルへと発展しています。「OMO」とはオンラインとオフラインの境界薄れ、さらに深い融合が進んでいくことを意味しています。
中国コーヒー業界に突如現れた「Luckin Coffee」
2018年の初頭、街には中国の俳優が出演した「コーヒー1杯で一緒に時間を過ごしませんか?」という「Luckin Coffee(瑞幸咖啡)」のCM動画が多く流れていました。毎日の通勤時、オフィス街でこのCM動画を目にした中国人は多いでしょう。
「Luckin Coffee」は2017年11月設立。中国国内で525店舗(2018年5月現在)を展開するコーヒーチェーンです。スターバックスや「COSTA COFFEE」(イギリス発祥のコーヒーチェーン。日本未上陸)など、大手コーヒーチェーンが席巻する中国コーヒー市場において、なぜ急成長できたのでしょうか?
「Luckin Coffee」のWebサイト
スマホがないと買えないコーヒー
「Luckin coffee」はオフラインマーケティングとオンラインマーケティングを組み合わせて多数のユーザーを集め、最新の手法でユーザーの拡大に取り組んでいます。「Luckin coffee」の特徴を簡単にまとめると、
圧倒的な広告出稿量
現金不要のアプリ決済(注文、決済、商品の受取などのすべてがモバイルアプリで完了)
セルフ受け取りまたはデリバリー
このようなビジネスモデルを採用しており、O2O(Online to Offline)の良い例と言えます。
オフラインでは「フォーカス広告」をメインに屋外広告と併用して露出度を向上させています。「LBS(中国位置情報サービス)」に基づいたWeChatの正確なターゲティングを実施。多くの顧客データを集めてビッグデータ分析を行うことで、位置情報に基づいた正確なマーケティングを行い、リピート率の向上を目指しています。
[オンライン]登録〜購入まで
ユーザーが「Luckin Coffee」の公衆号(WeChat公式アカウント)をフォローすると、自動返信でアプリのダウンロードに誘導します。
アプリのメニューからコーヒーを選択→注文の確認(セルフ受け取りまたはデリバリーを選択)→セルフ受け取りの店舗を選択→決済手段を選択 (WeChatpayなど)。
メニューからコーヒーの種類を選ぶ
注文の確認画面
受け取る店舗を選択する
支払い方法を選択する
[オフライン]セルフ受け取り、またはデリバリー
指定した店舗でQRコードを提示して商品を受け取ります。
QRコードの例
「Luckin Coffee」の実店舗
スターバックスはデリバリーサービスを開始
一方、スターバックスでは、新たなデリバリー事業「専星送」の提供を開始しました。効率的で高品質のデリバリーサービスを提供することで、顧客により良い購買体験を与えることができます。
こちらも注文はアプリから。例えばラテを注文する場合、コーヒー量やミルク種類など、細かく注文できます。
注文画面
注文に合ったサイドメニューが提示されます
支払い方法を選択して決済します(スターバックスカード/WeChatpay/Alipayなど)。
「注文は30分でお届けします」と表示されています
配送状況をリアルタイムで見ることができます
届いた商品がこちら。とてもきれいにしっかりと梱包されていました
利用後は満足度アンケートが表示されます
OMOモデルとは
ここまでご紹介したのは、コーヒー業界における現在のO2Oモデルの典型パターンです。そして、次に来る新しいビジネスモデルと言われているのが「OMO(Online Merges with Offline)」です。OMOモデルはO2Oモデルの欠点を補うものなのです。
2017年、「創新工場(Sinovation Ventures)」を創業したKai-fu Lee博士は、経済誌『The Economist』でOMOに関する記事「Meet OMO sapiens」を発表して大いに注目を集めました。
The Economist “The World in 2018,Meet OMO sapiens”
OMOについて、Kai-fu Lee博士は以下のとおり定義しました。
モバイルインターネットの普及により、消費者行動のデータ化、物流サプライチェーンの知能化が進んでおり、オフラインシーンにはより高い可能性が出てきます。
簡単に説明すれば、ユーザーがオフラインで買い物をして電子決済を使用すると、その消費データがオンラインシステムに収集されます。もちろんユーザーはWebサイト、アプリ、ミニプログラムなどでも買い物ができます。
最終的にはすべての情報は企業が商品の推奨やガイドを行う時の参考になります。ソーシャルネットワークの発展により、この消費過程が普及して付加価値が高くなり、さらに真新しい消費シーンが出てきます。これすべてはOMOです。
中国小売業界の現状
「2018年OMO白書」(OMO研究会)の資料を元に編集部で作成
記事には下記のようなことが書かれていました。
インターネットの登場からEC時代に入る前には、経済全体におけるオンラインの割合はほんの数パーセントに過ぎませんでした。しかしEC時代に突入すると10%〜20%を占めるようになりました。そして、O2O時代に配車サービスの「Didi」や「Meituan」のようなビジネスモデルが台頭したことにより、その割合はさらに30%程度に上昇しました。しかし、残った70%は依然としてオフラインのビジネスが占めています。
今後10年間で、残りの70%が完全にオンラインビジネスに参入し、オンラインとオフラインが統合されていくでしょう。「今後のOMO時代にはより多くのビジネスチャンスが生まれ、より多くのスタートアップ企業が登場し、消費者がより良い生活を送ることができる」と期待されています。
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本記事は日本のECメディアIMPRESSで掲載されています。
日本語原文URL:https://netshop.impress.co.jp/node/6089