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【業界視点】アリババが進めるニューリテール戦略を支える「天猫旗艦店2.0アップグレード」と「データバンク」とは?

発布時間:2019-12-13

アリババが進めるオフラインとオンラインの融合施策として掲げる「ニューリテール」。その推進のカギを握るのが、「ブランドに関わる全てのユーザーデータを財産・資産として取り扱い、貨幣のように蓄積と価値増加を図ることができる」(アリババグループの担当者)という「データバンク」だ

李立群(Richard Li)

Senior. Business Strategy Director, transcosmos China


<リード>

アリババグループが新たなマーケティングサービス「Uni-Marketing」を発表した翌年の2017年3月、コアサービスとなるデータバンク(Brand Databank)が正式リリースされました。アリババグループの担当者は「データバンクはブランドに関わる全てのユーザーデータを財産・資産として取り扱い、貨幣のように蓄積と価値増加を図ることができます」とコメントしました



<本文>

|アリババが示した2つの方向性

アリババグループは2019年6月25日の「Tmall旗艦店2.0アップグレード発表会(Tmall FLAGSHIP STORE 2.0 UPGRADE PRESS LAUNCH」」で、2つの方向性を明確に公表しました。


▪Tmallは、出店企業の「モノ」に関するオペレーションモデルから、「ユーザー」オペレーションモデルへの転換を支援します

シングルサイト(ECサイト)での販売モデルから、オンラインとオフラインを融合した多元的、多様なシーンで活用できる運営モデルへと転換します


今回の発表で、Tmallは、「アリババプラットフォームにとって最も重要な財産はユーザー資産(ユーザーが「タオバオ」と「Tmall」を通してブランド企業にもたらすGMV予測値)である。“旗艦店2.0アップグレード計画”の目的はユーザー資産の価値最大化、および、加速度的な増加にある」と明らかにしました。

小売市場の継続的な成長において、ブランド企業はユーザーの購買行動を詳細に把握することが重要となります。従って、Tmall旗艦店のアップグレード計画において、「データバンク」は非常に重要視されています。


「データバンク」とは

アリババの「データバンク」は、ブランド企業へ全面的にユーザーデータの管理を提供するダッシュボード。アリババが提供する統合マーケティングツール「Uni Marketing(ユニマーケティング)」の核となるサービスです。

 

アリババグループが保有するすべてのブランドのデジタルマーケティングに関するデータとユーザー購買履歴データを合わせた、総合マーケティング応用システムを搭載。ブランド企業がユーザーのライフサイクルを把握するために必要なデータベース(アリババグループのプラットフォームで蓄積されるブランド企業に関係あるユーザーデータ。ユーザーが何を好み、どのようなライフスタイルなのかに関するデータ)を管理、言い換えればCRM(顧客関係管理)を支援するものです

 

ブランド企業が抱える課題

近年、ブランド企業は次のような問題を抱えています。             

 

▪オンライン/オフラインのチャネル間の情報連携ができなく、それぞれバラバラになった各種データをマーケティングに活用できない             

▪ユーザーの購買行動に関する情報が断片的で、カテゴライズとインサイト(ユーザーの行動や態度の奥底にある、時には本人も意識していない本音の部分を見抜くこと)の発見が困難

▪データが持続的に活用されず「使い捨て品」として扱われ、一方的かつ限定的な運用にとどまる

 

理想的なデータ活用は、マーケティングの各段階でのデータが深く紐づき、シナジー効果を生み出すこと。ブランドがユーザーごとにカスタマイズされた施策を実施し、効果を検証、ユーザー分析後、改善施策を実施するPDCAサイクルを回すことが理想的な姿です。


理想的なマーケティングの流れ(transcosmos China作成)


「データバンク」が実現すること

「データバンク」はブランド企業の問題点を解決し、理想的なデータ活用を可能にします。


「データバンク」が実現すること(データバンク公開情報を元にtranscosmos Chinaが図を編集)


「データバンク」は、AIPL【「認知」 (Aware)、「興味」 (Interest)、「購買」 (Purchase)、「ロイヤリティ」 (Loyalty) 】というユーザーのブランドに対する各ファネルをオムニチャネルのデータを用いて可視化します。


ブランド企業はユーザーの各ファネルでの特徴を把握し、ユーザーことにカスタマイズした個別の戦略を立案することが可能になります。これにより、ユーザーへのリーチをオーダーメイド化し、有効的な露出回数と購買転換率を大幅に向上させることが可能になります。これは「Tmall旗艦店2.0計画」が掲げる「1人ひとりが違う」というコンセプトと一致しています。

 

|‍「統合ID(Uni Identity)」データシステムと人物像分析‍‍

圧倒的な資本力と技術力を備えているアリババグループは、EC事業、ローカルサービス、デジタルの娯楽産業、モバイル決済、金融、物流などのサービスを提供する膨大なエコシステムを作り上げました。

 

のうち、タオバオとTmallのアクティブユーザー数は6億人超で、決済サービスなどのアント・フィナンシャル(Ant Financial)の中国国内ユーザーは7億人を超えています。アリババはこのようなユーザー情報を統合的に管理マーケティング効果を最大化するデータ(ユーザーの興味、購買履歴など)と組み合わせています。これが「データバンク」の最大の強みです。

 

また、「データバンク」はマルチチャネルからもデータも収集できます。ブランド企業は自社のリアル店舗のユーザー情報、オフラインでのユーザー購買行動データ、ユーザータグシステム(ユーザーの興味嗜好・商品閲覧履歴に合わせて蓄積されたユーザーデータにタグをつけて特定化する仕組み)など、あらゆる情報を「データバンク」に取り込み、クロス分析を行えます。オンラインとオフラインのユーザー購買行動をより深く理解でき、購買データを生成できます。また特定のマーケティング環境において、ユーザーの購買行為、購買ルートの分析なども可能です。

 

統合マーケティングツール「Uni Marketing(ユニマーケティング)」のコアサービスである「データバンク」は、マーケティング活動で発生するすべての結果に関するデータを再収集することも可能。これらを実現しているのが、「統合ID(Uni Identity))」のデータシステムとなります。


「データバンク」のユーザー人物像と分析図(transcosmos Chinaが作成)


カスタマージャーニーに基づくユーザーオペレーション施策

アリババは統合ID(Uni Identity)データシステムを通して、AIPLを定義しています。さらにAIPLの各ファネルを可視化して、運営可能なユーザーデータ管理プロセスに進化させました。「データバンク」は効果測定、ペルソナ抽出、ターゲティング配信の3手法でマーケティングを高度化します。

 

広告効果測定の新しい視点

「データバンク」は、新しい切り口をブランド企業に提供することで、今までにない広告効果測定を可能にします。広告配信の基礎的指標としての「認知」だけでなく、「興味」、「購買」、「ロイヤリティ」の指標も提供します。


「データバンク」の広告測定について(出典:アリババ「データバンク」公式サイト


ここでの「認知」とは、広告の表示回数やクリック数のみならず、タオバオでのブランドに関するキーワードの検索行為も含まれます。また、「興味」、「購買」、「ロイヤリティ」はタオバオとTmallにおけるユーザーの購買行動から定義されます。


つまり、「データバンク」は初期段階のプロモーション(主に広告配信)とその後のタオバオ、Tmallでのユーザー購買行動を結びつけ、ブランド企業の広告露出と「認知」の測定を支援すると同時に、露出後のユーザー行動がどれだけ変化するかも可視化します。


認知データとユーザーの購買行動を紐づけることで、「ブランディング」と「購買転換効果」が連動したモニタリングメカニズムを構築。プロモーションの効果測定を高度化します。


ユーザーの人物像に基づくマーケティング施策

「データバンク」は詳細な条件設定により、ターゲット層を区分して、個人別の消費行動モデルを描き出します。ユーザーのさまざまな好みや分析側の使い勝手に合わせて、多様なタグをつけて管理することが可能です。


人物像に基づくマーケティング施策(アリババの「データバンク」公式サイト)


オーディエンスターゲティング

オーディエンス(広告の受け手であり、データベース上に蓄積されたユーザーデータ群)ターゲティングはデータバンクの最大の価値と言えるでしょう。データバンクが属性情報や位置情報、行動履歴等のオーディエンス選定規則を提供、細分化された条件よってターゲット層を選定します。

 

たとえば、ある電子製品ブランドが複数のECサイトを運営しているとします。その中には、Tmall旗艦店も各種のディーラー店もあります。従来のブランド企業は、割引やギフトなどのキャンペーン活動を通してマルチチャネルで最大限の販売をしようとします。一方、「データバンク」を活用したブランド企業は、各EC店舗のユーザーの人物像に対して分析/インサイトを実施することで、各店舗のユーザー像の相違性を掴み取り、従来よりも具体的なユーザー像を明らかにできるようになります

 

2018年以前の「Tmall」では、獲得ポイントによって「VIP会員」と「普通会員」にわけられていました。一定のポイントがたまると、自動的に「VIP会員」となる仕組みを採用していましたが、2018年以降、「Tmall」会員システムは「88普通会員」と「88VIP会員」に変更。注文したユーザーは自動的に「88普通会員」に認定。ユーザーの獲得ポイントが1000点以上の場合、88元の入会費で「88VIP会員」になることができるようにしました


分析結果をみると、ブランド企業はどのようなマーケティングチャネルを利用すべきか、どんなマーケティング施策を採用すべきか、どんな顧客に最適化を行い購買転換率を上げるかなどを的確に把握できるようになります。

 

こんな背景があれば「データバンク活用」が適する

▪アリババプラットフォームでの広告配信ニーズがあり、特に露出系の広告配信を行いたい (大型動画プラットフォーム「YOUKU」など、アリババ以外の広告資源も豊富)

商品がTmallとタオバオで販売されている(旗艦店を運用しているなら更に適している)

▪ターゲットの属性情報、行動履歴を把握したい


|「データバンク」認証サービス企業

アリババの「データバンク」は認証制となっており、トランスコスモスチャイナは「アリババデータバンク認証サービス企業」29社のうちの1社 (2019年3月時点)。2017年3月データ分析チームを発足させ、2018年6月にアリババエコシステムとニューリテールの活用に向けてUni-marketing部門を立ち上げました。2019年現在、35人のデータアナリストがデータバンクを活用して、ブランド企業のデータ分析から戦略立案、マーケティング施策の実行を提供しています。


後もトランスコスモスチャイナは継続的にブランド企業のデジタル化に取り組み、Tmall旗艦店2.0アップグレードの中で、お客様企業にブランド影響力と業績向上の実現に向けてサポートしていきます。



 





 




報道関係者お問い合わせ先

transcosmos China マーケティング部

Email:marketing@transcosmos-cn.com

Tel:+86(0)21-5256 4608

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