【業界視点】9億人が使う中国SNS「WeChat」のEC向け新機能「オフィシャルプレミアムショップ」とは
メジャーブランドがこぞって出店する「オフィシャルプレミアムショップ」。その理由は?
トランスコスモスチャイナAlima 5月30日 07:00
中国大手IT企業Tencent(テンセント)の無料インスタントメッセンジャーアプリ「WeChat」はソーシャルメディアアプリからスタートした後、スマートフォンの急速な発展に伴い数年で急成長、ユーザー数は飛躍的に増加しました。この「WeChat」で、日本のメーカー・EC事業者さんに注目してほしいのが、2017年末にリリースされた「オフィシャルプレミアムショップ」という新サービスです。
「WeChat」上で提供している「ミニプログラム」(WeChat上で動くインストール不要のアプリに似たプログラム)と同様に、販売業者と消費者をつなげるプラットフォームとして、「WeChat」上で消費者は直接商品を購入することができるようになりました。日本ではほとんど知られていない「オフィシャルプレミアムショップ」を詳しく説明していきます。
l オフィシャルECサイトへの入り口となる「オフィシャ
ルプレミアムショップ」
「WeChat」は2017年9月時点で、1日の「WeChat」利用者数は9億人を超え、前年比17%の成長率を記録。また、月間のシニア利用者数は5000万人、1日の情報送信件数は380億件、音声送信件数は61億回にのぼります。
「Tall」(天猫)とJD.comの2台巨頭が圧倒的シェアを占める中国EC市場で、「WeChat」の強力なソーシャルネットワークとモーメンツ広告(「WeChat」内でユーザー同士が情報を共有し合う「モーメンツ」上に表示できるネイティブ広告)を活用しながら、テンセントは「オフィシャルプレミアムショップ」でECの新しい道を切り拓くことができるのか? 「WeChat」の「オフィシャルプレミアムショップ」にはこのような期待が集まっています。
「WeChat」のトップにある「搜一搜(検索)」をクリックし、ブランド名を入力して検索すると、画面上部に、ブランドの「オフィシャルプレミアムショップ」が表示されます。タップすると、商品を購入することができます。
「WeChat」の「検索」機能
ユーザーがブランド名などのキーワードを入力して検索すると、オフィシャルプレミアムショップの他に、「ブランド名」を付けた友人のモーメンツ投稿(「WeChat」内でユーザー同士が情報を共有し合うことを「モーメンツ」と呼ぶ)や、ブランドの公式アカウント(公衆号)、Baidu百科事典などの関連情報を閲覧することができます。
中国の「WeChat」ユーザーの間では、この検索機能からさまざまな商品や情報を検索することが日常行動として定着しています。各ブランドは「WeChat」の検索機能を通じて自社のブランドや店舗を認知してもらい、購買につなげようとしています。
Nikeのオフィシャルプレミアムショップ
l「オフィシャルプレミアムショップ」の仕組み
企業の出店状況
2018年4月時点では、「WeChat」の「オフィシャルプレミアムショップ」に出店ているブランドは中高級ブランドがメインとなっています。たとえば、NIKE、Starbucks、Cartier、Gucci、Lancome、Louis Vuitton、Montblanc、Swarovski、Tiffany、ZARA。ジャンルはスポーツ用品、ファッションなど多岐に渡っています。
決済とカスタマーサポート
「Tmall」、「JD.com」などのECプラットフォームとは異なり、「WeChat」の「オフィシャルプレミアムショップ」は、「WeChat」上の自営店舗(自社ECサイト)という位置付けになります。
決済は、「WeChatPay」以外にも、「Alipay」「着払い」といった複数の決済手段が利用可能です。また、ユーザーが店舗の窓口担当者へ直接問い合わせることもできます。
l「オフィシャルプレミアムショップ」に出店する理由
その理由は単純です。多くのユーザーが使い、エンゲージメントが高く、とても便利だからです。
「WeChat」は中国内での主要ソーシャルツールとして、チャットやモーメンツ機能などさまざまなサービスを提供しています。ネットショッピングの機能も提供しているので、ユーザーは毎日何時間も「WeChat」を利用していています。
地下鉄、エレベーター、ダイニングテーブルの前など、モーメンツ上の投稿を閲覧しているユーザーの姿はいつでも、どこでも見かけることができます。
「WeChat」の機能が拡張しているため、ユーザーは別のアプリへ切り替えたり、複数のアプリをダウンロードする必要がありません。そのため、「WeChat」という1つのアプリで、チャット、読書、友達作り、買い物などの複数の機能を利用しています。
2017年1月には「WeChat」内でアプリを構築できる「ミニプログラム」という機能も追加され、「WeChat APP」内でシームレスにさまざまなアプリケーション機能を利用することが可能となりました。EC機能はもちろんのこと、位置情報と連携したデリバリー、レンタルサイクル、航空券の手配なども可能です。
ミニプログラムの表示画面
l「オフィシャルプレミアムショップ」の利点と欠点は?
「オフィシャルプレミアムショップ」というくらいですから、店内の商品は「プレミアムグッズ」でなければいけません。
「Tmall」のように、簡単に店舗を構え、すべての商品を掲載してユーザーに選んでもらうという設計ではないのです。
簡潔なインターフェースのため、ブランド側が最も強調したい部分をアピールしなければなりません。普通のオンラインショッピングモールとは異なり、「オフィシャルプレミアムショップ」は、ブランドプロモーションに役立つUI(ユーザーインターフェース)であり、UX(ユーザーエクスペリエンス)を意識したインタラクティブなサービスである必要があります。
企業は商品販売だけを利用していません。ユーザーに商品情報や企業文化を届け、交流を一層強化し、ブランド認知度を高め、オフライン販売に貢献することを主な狙いとしているブランドがたくさんあるのです。
一方、ブランドが作った「オフィシャルプレミアムショップ」は、自由度が高く、ブランド戦略に合わせてマーケティングを行うことができます。ブランド側がすべての購入データを取得できるので、オンラインチャネルとオフラインチャネルを融合し、顧客ロイヤリティを向上させることもできるのです。
「オフィシャルプレミアムショップ」は特に、UI、UXを意識した設計になっている
「オフィシャルプレミアムショップ」は人気があるものの、購買体験があまり充実していないのが欠点と言えるでしょう。たとえば、公式サイトの読み込み時間が長すぎる、商品不足、ショップのキャンペーン活動がまだ開始されていないなどの問題点があります。
l「WeChat」がめざすソーシャルECの方向性とは?
「WeChat」のユーザー基盤は日々成長しています。ソーシャル上での友人間の口コミはブランド価値を向上させます。
そして、「WeChat」は、「オフィシャルプレミアムショップ」のほか、公式アカウント(公衆号)、ミニプログラム、モーメンツ広告、「WeChat決済」などの機能とあわせて、ソーシャルEC内のバリューチェーンを形成することによって、企業のユーザーへの正確なターゲティングが可能となります。
「WeChat Pay」や「ミニプログラム」機能を利用することで、オフラインのユーザーにアプローチし、ビッグデータサービスを活用することも可能。取扱製品のマーケティングを支援することができます。
「WeChat」は、一般的なECプラットフォームと競合するのではなく、ユーザー向けに、ハイエンド製品の正確的なターゲティングと情報配信をすることでブランド価値を向上するといった戦略を持っていると考えられます。
このような状況下、トランスコスモスチャイナは2016年から「WeChat」関連ビジネスに積極的に取り組み、2017年9月にテンセントのソーシャル広告の代理権を取得。テンセントの全プラットフォームでの広告配信サービスを提供することが可能となりました。主要プラットフォームは、インスタントメッセンジャー「QQ」、ソーシャル・ネットワーキング・ツール「WeChat」などです。
トランスコスモスチャイナはクライアント企業のWeChat「オフィシャルプレミアムショップ」に、ワンストップECとデジタルマーケティングを融合したトータルサービスを提供することが可能となり、ブランド企業の売上高や顧客ロイヤリティの向上を図っています。
本記事は日本のECメディアIMPRESSで掲載されています。
日本語原文URL:https://netshop.impress.co.jp/node/5468