【業界視点】中国EC市場を攻略するカギはソーシャルメディアの活用にあり【最新情報と基礎知識】
中国の2大ソーシャルメディアと言われている「微博」「微信」を中心に、中国の最新ソーシャルメディアマーケティング事情を紹介します
トランスコスモスチャイナ 渡邉 竜美(WATANABE TATSUMI)
Acting Account Director
Digital Marketing Dept. BD&AE Unit
<リード>
中国のECマーケティングに欠かせない手法と言えばソーシャルメディアマーケティングです。2大ソーシャルメディアである「微博(Weibo)」「微信(WeChat)」抜きには中国のマーケティングを語ることはできません。メーカー・小売企業にとって、ソーシャルメディアを活用しながら消費者をECサイト・リアル店舗に誘導し、顧客を囲い込めるかが成功のカギとなります。
今回は、2大ソーシャルメディアと言われている「微博」「微信」を中心に、中国の最新ソーシャルメディアマーケティング事情を紹介します。
l中国の2大ソーシャルメディア「微博」「微信」とは
「微博(Weibo)」はTwitter+Facebookの機能を持ったミニブログ
日本でもお馴染みになりつつある中国版Twitterと呼ばれる「微博(Weibo)」は、新浪公司が運営するミニブログサイト。TwitterとFacebookの要素を合わせ持っており、中国全体のミニブログユーザーのうちの57%、投稿数にして87%を占めると言われています。2009年8月にサービスを開始し、全世界に6億人以上のユーザーを抱えている中華圏最大のソーシャルメディアです。
微博の主な機能
2016年まで、通常の投稿は140文字以内という文字数制限あったこともあり、中国版Twitterと呼ばれていました。企業の場合、公式アカウントを開設して運用するケースが多く、「微博」上でブランディングをしながら、EC・リアル店舗などにユーザーを誘導をしています。
迅銷(中国)商貿有限公司(中国のユニクロ)の微博、アカウント名は优衣库_UNIQLO)
「微博」は、オープンなプラットフォームであると同時にコミニュケーションツールでもあります。ユーザーとのコミュニケーションを上手に図り、ブランディングをしながら、いかに売り上げにつなげることができるかというのが「微博」アカウントを運営する上でのカギとなります。
「微博」の公式アカウントを開設すれば売り上げにつながるというのは大きな誤りで、アカウント開設はスタート地点に立ったということに過ぎません。
コミュニケーションを図る最適な方法も、各企業・各ブランドで異なります。アカウントの人格をきちんと設定し、ターゲティングしているユーザーと正確に接点を作り出すということが非常に重要となります。
有料にはなりますが、Facebookのようにフォローの有無に関わらず、ユーザーのタイムライン上にアカウントや記事を配信させるフィード広告などの広告メニューもあります。中国向けビジネスに力を入れたい企業はそういった広告メニューを上手く活用することもお勧めです。
筆者の「微博」アカウント
中国版LINE「微信(WeChat)」とは?
中国版LINEと呼ばれる「微信(WeChat)」は、中国の大手IT企業テンセントが開発した無料インスタントメッセンジャーアプリです。
筆者の「微信」アカウント
2011年1月に中国で微信(WeChat)サービスを開始し、同年4月、海外向けに展開しました。メッセンジャー機能とソーシャル・ネットワーキング・サービス機能が融合している点が特徴です。
「微信」は、Facebookアカウントでの登録が可能(中国国内専用版の「微信」は不可)です。現在、登録ユーザー数は11億人を超え、20以上の言語版があります。200の国と地域をカバー、70を超える国と地域で利用者数ナンバーワンを獲得しているソーシャルアプリと言われています。
微信の主な機能
「微信」は「微信支付(WeChat Pay)」と呼ばれるペイメント機能のほか、携帯電話のチャージや光熱費の支払いができる機能もあります。中国で生活をしている中で、財布を持たず、携帯電話1つで外出することも多く、こういったペイメント機能は日常生活では必須のものとなっています。
微信支付(WeChat Pay)の画面表示
2018年には、小程序(ミニプログラム)と呼ばれる、外部APP(アプリ)をユーザーにダウンロードさせることなく、微信のブラウザ上で見せる機能もリリースしました。
小程序(ミニプログラム)の画面表示
「ミニプログラム」のリリースには、「微信さえあれば、全て解決する」というメッセージがあります。そのため、最近の中国のマーケティングにおいて、「微信」マーケティングは非常に重要であるという認識が浸透してきています。また、「微博」と同様に、フィード広告などの広告メニューもありますので、ターゲティングしたユーザーに対して効率的にアプローチしたい企業は活用すると良いでしょう。
微信は、朋友圈(モーメンツ)と呼ばれるタイムラインページがあり、微博と同様に、つぶやきを投稿できます。
中国EC市場でのソーシャルメディア活用で心得ておくべきこと
2大ソーシャルメディアの基本的な機能や特徴を踏まえた上で、ソーシャルメディアと中国EC市場の関連性を説明していきましょう。
筆者の経験を踏まえた意見ですが、「微博」「微信」だけで、中国でのマーケティングを網羅することはできません。オンライン、オフラインを合わせて、さまざまなマーケティング施策が存在します。しかし、中国EC市場において、競合他社や競合商品・サービスとの差別化を図るためには、ソーシャルメディアの活用は必要不可欠と言えます。
筆者は10年以上、中国のマーケティングに携わっていますが、「これさえやれば大丈夫」という正解には出会っていません。それは日本でも同じことが言えるでしょう。ただ、1つ言えるのは、日本と同様に、ユーザーとの接点を増やし続け、ユーザーに興味を持ち続けてもらえるかということが非常に重要だと考えています。
「微博」「微信」以外にも、小紅書(RED)、抖音(Tik Tok)といったサービスも多くのユーザーを抱えています。人気の高いツールのため、今後はマーケティングの手法の1つとして活用を検討する必要があります。
中国は、流行り廃りも変化のスピードも早く、中国で成功するためには、市場やトレンドの変化に合わせて、最新のマーケティング手法を取り入れることが重要なのです。
「WeChat」などのテンセント社のサービスでPRする方法は?
先日、筆者はテンセントを訪問してきました。筆者が所属するトランスコスモスチャイナは、テンセントの広告代理権を取得したということもあり、定期的に意見交換などを行っています。
移転前のテンセント本社ビル
移転前のテンセント本社1階のロビー
中国EC市場をソーシャルメディアで開拓するには、代理店選定も重要な成功要素の1つとなります。しかし、「テンセント」のソーシャル広告代理権を取得し、「WeChat」「QQ」などテンセントプラットフォームの広告配信サービスを提供している日系企業はごくわずかです。中国現地にはさまざまな代理店が存在しますが、日本企業がスムーズな運用を実現するには、言語などを含めたコミュニケーションの充実は避けては通れないところです。
移転前のテンセント本社に訪問した筆者
トランスコスモスチャイナは、会社の定期訪問などを通じてテンセントとの関係性を強化しているので、日本語でコミュニケーションを取りながら、クライアントがテンセント内で最大限のパフォーマンスが発揮できるようにサポートしています。
中国ではデジタル化が加速し、ソーシャルメディアはさらに重要なマーケティング手法になっています。ただし、マーケティングの全てがデジタルで完結されるというわけではありません。
交通広告やポップアップ店舗などを駆使するようなアナログな手法も多いのが実態で、デジタルとアナログをハイブリッドした「デジログ」な手法でトライ&エラーを繰り返す、というのが重要になるでしょう。
テンセントでのソーシャル広告代理店
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本記事は日本のECメディアIMPRESSで掲載されています。
日本語原文URL:https://netshop.impress.co.jp/node/6016