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【業界視点】「大手との真っ向勝負は避ける」――アリババとJDを追う中国EC3位の新鋭「Pinduoduo」のビジネスモデルとは

発布時間:2019-04-18

ソーシャルECで台頭した「拼多多(Pinduoduo)」のGMVは唯品会(VIP.com)を超え、「Taobao.com」「JD.com」に次ぐ、中国3番目のECサイトとなった

Jessie Xu

Senior Department Director of PM, CC BU, transcosmos China


ソーシャルを軸に共同購入のECサイト運営を手がける中国のベンチャーEC企業「拼多多(Pinduoduo)」(以下PDD)が2018年7月26日に米ナスダック(NASDAQ)へ株式を上場し、中国のEC業界に大きな衝撃を与えました。それは、2015年9月の設立からたった3年での株式上場だったからです。中国の大手ソーシャルメディアは「PDD」の話題や記事で持ちきりに。ただ、Alibaba(アリババ)や京東(JD.com)が上場した時のお祭りムードとは異なり、PDDの上場にはネガティブな意見が後を絶ちません。しかし、PDDは成長し続けています。



| 「拼多多(PDD)」の流通総額は中国3位に

PDDの2018年第3四半期(1月~9月期)の決算によると、直近四半期末(2018年9月)から過去12か月分(LTM)のGMV(流通総額)は3448億元(1元16円換算で約5兆5000億円、前年同期比385%増)、売上高は33億7200万元(前年同期比672%)。3億8550万のアクティブユーザーのうち、月間アクティブユーザー数は2億3170万人に達しています。GMVは唯品会(VIP.com)を超え、「Taobao.com」「JD.com」に次ぐ、中国3番目のECサイトとなったのです。


左上から時計回りに、3QのGMV、売上高、アクティブユーザー数、月間アクティブユーザー数(画像はPDD公式サイトからキャプチャ)

直近四半期末から過去12か月分(LTM)のGMV(流通総額)推移(画像はPDD公式サイトからキャプチャ)

PDDがEC市場のダークホースであることは間違いありません。アリババが15年もの年月をかけて実現した米ナスダック上場を、PDDはたったの3年で成し遂げました。熾烈な競争が続く中国EC市場において、PDDはどのようにして既存のECの構図を打ち破り、頭角を現わしたのでしょうか?


| 大手モバイル決済企業間の競争が新たなEC企業の発展を後押し

アリババグループのモバイル決済サービス「Alipay(アリペイ)」の誕生によって、消費者は安心してオンラインショッピングができるようになりました。アリババグループの「Taobao」の成功は、「アリペイ」の誕生と発展と綿密に結びついているといっても過言ではないでしょう。


中国インターネット企業大手「Tencent」は、「Taobao」を筆頭とした急速に発展するEC市場を無視できませんでした。そのため、「Tencent」は2016年、PDDに出資しています。


中国インターネット企業大手「Tencent」は、「Taobao」を筆頭とした急速に発展するEC市場を無視できませんでした。そのため、「Tencent」は2016年、PDDに出資しています。


2014年にTencentが「WeChat Pay(WeChatペイ)」をリリースしたことを機に、「アリペイ」とのユーザー争奪戦が始まりました。2014年から2017年までの期間、「アリペイ」と「WeChat Pay」は、決済キャッシュバックなどの大規模キャンペーンを繰り広げました。両社の熾烈な競争はオンラインからオフラインにまで広がり、中国モバイル決済市場の発展をさらに加速させました。


そして、モバイル決済を軸に、ECのソーシャル化、ECとリアルを連動させるオフライン化、ECとゲームの連動といった斬新なビジネスアイディアが生まれてきました。決済プラットフォームは大きなマーケットを獲得するため、積極的に他のECプラットフォームを迎え入れています。これが、新興EC企業の発展にも大きな影響を与えています


PDDの成功の理由は、外部環境の変化に対応したこと、そして、適切な時期に正しいマーケット戦略を行ったことがあげられます。


「Taobao」や「JD」が消費力拡大に着目し、経済力のある消費者や90後(1990年代生まれの世代)に力を入れている時、PDDは消費力の低い、経済的で安さを追求する低所得者層に注目したのです。


| 「ソーシャル+EC」で成長できた理由

ソーシャルECの新興企業の代表としてPDDは間違いなくECマーケットに活気を与えました。PDDの成功の決め手は、ターゲットの気持ちを深く理解したソーシャルモデル、および明確な差別化市場戦略にあります。PDDの創立者である黄铮(ファンズン)氏は「財経」のインタビューで次のように語っています。


"共同購入はGMVを増やすための道具にすぎない。PDDは人のロジックです。共同購入を通して人を知り、人を通して物を勧め、最後は機械が物を勧めることになる。"


PDDのキャッチコピーは「新しいEC創業者、共同購入でさらに安い」。PDDは“新しいECビジネス”と称し、ソーシャルの要素をEC運営に取り入れた「ソーシャル+EC」のモデルを展開しています。


多くの消費者が楽しくお得な情報をシェアし、共同購入という新しいショッピング体験を楽しめることを推進しました。これにより、PDDは低コストで多くの新規顧客を獲得できたのです。


PDDはビジネスモデルを発展させるために、獲得したユーザーの人物像や購買行動の分析に力を入れています。ソーシャルECでは、知り合いや友達との間に信頼感が存在するため、友達の推薦と評価が受け入れやすい土壌です。


友達同士の情報共有、ユーザー同士のソーシャル関係はECの商品購入に直結するため、必然的に顧客ロイヤリティが高くなります。購買意欲を高め、同時に共同購入と値段交渉の仕組みは価格重視の低所得者層を引きつけました。


PDDの公式サイト(画像はPDD公式サイトからキャプチャ)

PDDはユーザーのショッピング体験を特に重視しています。たとえば、一般的に「WeChat」でログインすると買い物がより便利になり、購買率が高まると言われています。PDDにログインする時に「WeChatログイン」を選択すれば、ユーザー登録をする必要がなく、面倒な個人情報入力が不要となります。宅配場所の情報を追加し、決済は「WeChat Pay」を選択するだけです。


「PDD App」のログインインターフェース、直接「微信登録」(「Wechatログイン」)を選択

「確認登録」を選択後、PDDに「WeChat」の個人情報公開の権限を与えれば、ログインできるようになる


ECの初心者、経験者にとっても、PDDの共同購入価格の安さは魅力的です。広告配信される商品は破格の値段で、「PDD=安い」という印象を、長期に渡ってユーザーに与え続けています。しかも、ユーザー初期登録はクーポンの割引率が高いのです。また商品を受け取ったら、消費者はクーポンをもらえます。このような施策にユーザーは満足し、お買い得感を得られます。


PDDを立ち上げると、クーポン受け取りの画面が表示されます。消費者を引きつけることで、購買を促しています


2018年末時点で、PDDはすでに200万以上のメーカーを抱えて、商品ラインナップはFMCG(日用消費財)、3C(Computer、Communication、ConsumerElectcs)、食品、生鮮食品、家具など幅広いのです。増え続ける商品は日々多様化する消費者のニーズを満たしています。


PDDはスマホ端末でのアプリ以外に、「WeChatミニプログラム」もあります。「WeChat」で「PDD」を検索すると、ミニプログラムを通じて、PDDのプラットフォームで商品閲覧と購入ができます。


PDDのミニプログラム


| 出店者にとっての第3の販路

多くのEC店舗では、「Tmall」「JD.com」からトラフィックを獲得するために、低価格で勝負するしかない状況でした。価格勝負は中小店舗にとっては大きな打撃です。そのため、多くの中小店舗は生き残りを図るため、徐々に「WeChat」などのプラットフォームに移転しました。


この状況もPDDの発展を後押ししたのです。同時に、PDDはこれらの中小店舗に貴重なトラフィックの入り口となるサポートを提供。資金力の乏しい中小店舗にとってPDDは最適なプラットフォームとなりました。


PDDと他のECプラットフォームとの一番の違いは、「買い物カゴ」がないことです。「買い物カゴに入れる」「買い物カゴを確認」といった一般的な買い物フローは存在しないので、消費者は直感的に購入するかどうかをすぐに決めます。そのため転化率が高い傾向にあるのです(2つの商品を購入する場合は、支払い手続きが2回になります)。


また、PDDのトラフィックのほとんどは無料のSNSトラフィックとプラットフォームから提供されるため、店舗は一般的なプラットフォームでの販売よりもコストを抑えることができます。


通常、多の大手モールに出店すると、トラフィックを得るために膨大な資金を投じる必要がありますが、PDDはSNS経由がメイン。低コストに抑えることができる分、低価格での販売を実現しコンバージョン率を高め、店舗・ユーザー双方に利益をもたらすことができるのです。


このように、PDDは低所得者層の購買需要を満たし、中小企業にとって魅力的な巨大なプラットフォーム市場を作り上げました。PDDでは店舗もユーザーも増加率がスピーディーに伸びています。


Alibaba、JD、PDDのGMV対比。PDDのシェアは少しずつ増えている(出典は「Supersymmetry Technologies」)


| 中国の「ソーシャル+EC」はどのような道をたどるのか

新しいECモデルであるソーシャルEC、そしてPDDの今後の発展については多くの議論があります。ただし、競争の激しい中国EC市場において、今後参入するEC企業にもチャンスがあることを、PDDが示したと言えるでしょう。筆者は「人のニーズに注目し、市場での位置付けを正しく定め、革新と大手との真っ向勝負を回避した」ことがPDDの発展につながったと考察します。


冒頭で記した通り、PDDの上場時には各方面から異論があがりました。上場半年後の株価は、2018年度の最終赤字などを受けて下落気味。ですが、2018年に、PDDの年間アクティブユーザー数は4億2000万人に達し、「JD.com」の3億1000万人を超えました。PDDの規模全体は大きくなっているので、さらなる発展を期待している声が多いのも事実です。


PDDは自社の問題と未来の道をよく心得ています。CEOの黄氏は、3年間でTaobaoの10年分を渡りきった企業として、PDDは成長スピードが速い反面、「Taobaoが10年間で遭遇した問題に、PDDは短期間で直面してしまう」と述べています。


また、社員の評価基準はGMVでなく、ユーザーの獲得にあると言及しています。まずはリピート顧客、次にGMV。PDDはGMVの成長スピードを抑えているのです。成功をなし遂げた裏には堅実な経営理念が見えてきます。


中国では、「小紅書」はSNS型のECプラットフォームとして、90後(1990年代生まれの世代)の生活に深い影響を与えています。全世界では、「Instagram」も「Check-out」機能というオンラインショッピングをテストしていると発表しました。


先日、「中国電子商務年会」において中国電子商務の主任である蘇軍さんはこう話していました。

"ソーシャルECは風当たりの強い状況だが、私たちは中国EC市場において、ソーシャルECを代表するPDDと「小紅書」の今後の発展に期待しています。"


最後に、アリババの創業者である馬雲(Jack Ma)氏の言葉を紹介します。「この社会は元々多くのものが存在すべきで、それでお互いが融合する」。Jack Ma氏は業界内に実力のあるライバル企業が存在する構造が市場の発展には重要だと考えているのです。


トランスコスモスチャイナはコンタクトセンターサービスやECワンストップサービスの提供を通じて、「人」と「技術」の融合に注力し、クライアント企業に高品質なサービスを提供しています。

報道関係者お問い合わせ先

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